真に幸せになるための法華経 信解品第四 13
妙法蓮華経 信解品第四 13
前回は比喩第三でした。今回は信解品第四(しんげほん)です。
舎利弗への受記を目の当たりにした四大声聞(摩訶迦葉(まかかしょう)・慧命須菩提(えみょうしゅぼだい)・摩訶迦旋延(まかかせんねん)・摩訶目健連(まかもっけんれん)は方便品での諸法実相の意味と方便を用いて仏性を見出し、悟らせるという仏の慈悲を信解することができました。
そこで、今度は四大声聞が信解(領解・理解したこと)したことをお聞き下さいと
申し出て、「長者窮子(ちょうじゃぐうじ)の譬え」を話します。
長者窮子の譬え
ある人が幼い時、無知であった為に父のもとからさまよい出てしまいました。諸国を放浪しその日暮らしをしていました。しかし不思議な事に自然と父の元へ進んでいたのです。
父は子供を失って悲しみ、子供を求めて探しましたが、探し出す事が出来ずにいました。そこである都に留まり、大変、家は栄えていました。金銀財宝、使用人を有し、多くの人に慕われて、国王からも尊敬を得ていました。そして50年あまり一時も息子の事を忘れた事がありませんでした。しかし、年老いて、財産を相続する者がいないことを考え、子供がいたらどんなに安心できるかと思案しました。
そうこうしているうちに、息子は父の住む都にやってきました。まだ知りえない父である長者の威厳ある様子を見て、恐怖心を覚えました。自分は貧民街の方があっている、早く逃げ出さなければ捉えられるかもしれないと走って逃げました。
長者は一瞬にして我が子であると気づき、家来に連れてくるように命じました。
連れてこられた子は恐怖のあまり倒れてしまいました。そして水をかけられ気がつき、又、貧民街へ帰っていきました。長者は子が卑屈な心になっているから帰えしたのでした。今度は長者はみすぼらしい姿をした使用人に我が子に良い仕事があると言って連れてくるように言いました。どんな仕事かと聞かれたら、糞尿を処理し、ドブなどの掃除をする仕事だと言いなさいと言いました。
子は話を受け入れついてきましました。そして、賃金先払いで受けとり、汚物掃除を始め、一生懸命働きました。長者は哀れな子の姿を見て悲しくもありました。すると長者は自ら汚い着物を身にまとい、働く者達の所へやってきて、声をかけ、警戒心を解きながら近づいていきました。
窮子に安心してずっとここにいるとよいといいました。窮子という名前をつけて仮の子にしたのでした。それから20年の間、不浄の仕事を続けさせました。20年も過ぎるとオドオドしなくなったので、長者は病気になり、財産管理を任せるといいました。
そして、子の卑屈な心がなくなりすべてを任せても良いと判断し、皆を呼び寄せ、窮子は実は私の実の子だと言いました。全ての財産はこの子のものです。と告げたのでした。
四大声聞は信解したことをこの譬え話をもって申しあげました。
解 説
大長者=仏様
窮子=我々
①愚かである凡夫の我々に慈悲の手を差し伸べてくれる仏様を表しています。
②流浪のあげく仏様はいつもそばにいて下さる。
③煩悩の殻(芥を掃除)を除き仏の子であるという自覚を促す。
④おもむろに導く。一遍に切り出すと警戒される。
⑤現世利益を説く。初めから高尚な事を言っても、受け入れてもらえない。
⑥長者自ら粗末な衣服を着る。この事は仏様のこの世への出現を表している。
⓻慈悲の現れ。かわいそうだという情け心。
⑧所帯道具や食料を与える。これは心の拠り所を与えることを表している。
⑨使用人を付ける。信仰を持てば自由自在になる事を表している。
⑩仏に生かされている。
信と解、両方を兼ね備えているのが本当の信仰である。
全ての人に仏性があり、悟りに近づくことが出来ると譬え話で解りやすく説かれている品です。
こうして、四大声聞が比喩品第三での理解したことを信解品の譬え話を通じて申し上げました。
次回は薬草喩品第五に入ります。